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Virus 37
2007/04/22(Sun)
中田は悪いと思いつつも、部屋の中を見回した。どんな些細なことでも情報がほしかったし、何よりこの沈黙が窮屈だった。
と、チェストの上のフレームに納められた家族写真が眼にとまった。正装して写真屋(プロ)に撮ってもらった物ではなく、公園の芝生の上で、人のよさそうな通行人に撮ってもらったような、そんな写真だ。はしゃぐ娘ふたりに困ったような笑顔を向ける父親と、暖かく見守る母親。四人ともが和やかで、この数年後におこる別れなど全く予想もしていない世界があった。
そういえば、母親の顔を初めて見たわけだが、どうやら美可は母親似らしい、などと思った。
「あの日……」
 中田の視線の先をやはり見ていた美可が語りだした。

 九年前、夏休みに入ってすぐの頃だった。
 その日の朝も、美可は近場の公園で子供会のラジオ体操に参加していた。学校からもらったカードに、一回の参加で一個のスタンプを押してもらえる。夏休み中にこなさなければならないノルマがあり、スタンプの数がノルマに満たない場合、どんなペナルティがあるのか当時の美可にはわからなかった。わからなかったのにその義務を果たさなければならない、という子供特有の責任感が美可をラジオ体操に参加させていた。
 絵里を羨ましく思った。あの双子の妹は、昨年の春から学校の金管バンドに入部しており、その朝連のためこの義務を負わない特権を与えられていた。
 金管バンドとは、ブラスバンドから木管楽器を除いたようなもので、名前の通り金管楽器と、スネアドラムを主軸とした鼓笛隊からなるマーチングバンドのことだ。平常授業時も朝連をこなさなければならない部活だが、夏休みともなると練習の時間が大きくとれること、加えて秋には、コンクールに運動会と大きな出番が二つも続くので自然と力が入って厳しくなる。先生も児童も、だ。
 だが、金管バンドに所属していない美可にはそんな事情をわかるはずもなく、ラジオ体操をさぼれ、運動会では全児童が炎天下整列をしているなか、テントの影で座っていられる彼らが羨ましかった。しかし、それも裏をかえせば憧れであり、運動会の昼休み終了後に行われるマーチングでは、みなが金管バンドの演奏と動きに憧憬の眼差しを送るのだ。美可もそんなひとりで、そういった晴れ舞台ではなくても、夏休みの練習を学校のプールから聞き耳をたてていた。
 絵里が吹くのはコルネットという、トランペットを一回り小さくしたようなもので、その音色を美可はプールサイドで探す。コルネットの奏者は三人いるはずだが、一番下手なのが絵里であろうと勝手に推測して、その稚拙な演奏を楽しむのがその頃のマイ・ブームだった。

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2007/07/27 00:42  金管楽器のレビュー
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