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Virus 29
2007/03/18(Sun)
 季節は夏。八月も半ばを過ぎていた。
 その日も2階の資料室で書類の整理をしつつ部下(中田)に夕食のリクエストをしていた杏子に室長の大久保から内線があった。
 オフィスに出向くと室長と対面する形で一人の男が座っていた。中田たちの位置からは後姿しか見えないが、それでも、ワックスでオールバックに固めた髪や紺のスーツの形のよい襟からだいたいの性格は想像できる。室長に北沢と紹介をうけて振り向いた顔はたるみがなく、銀縁のメガネには概ね気難しい印象を与えるものだが、彼の第一印象は穏和なものであった。
「北沢栄樹と申します」
 すっと立ち上がった北沢氏は腰から四五度の角度で、丁寧というよりも儀礼的なお辞儀をよこした。手渡された名詞には東京国立美術館学芸員とあった。
 大久保は中田たちを、今回の調査員として紹介した。礼を返すふたりを座るように促すと、腰を降ろした二人の前にノートほどの厚さのファイルをおく。
「とりあえずは北沢さんの話をきいてもらおう」
「はい」と応えたのは北沢だった。
「端的に言えば、人を探しています」
 そう言って応接テーブルの上に差し出した写真は、写真屋で撮った家族写真といった感じで、壮年のスーツの男が一〇歳前後の二人の女の子の肩に手を置いている。女の子は双子なのだろうか。顔も背もほとんど違いがない。ただ、身に着けているものが片やワンピースで、片やTシャツにハーフパンツであるので見分けはつく。
「探し出してほしいのはそこの男と、男の子のような格好の女の子です。男は北沢栄二。私の弟です。ふたりは姪にあたります」
「あなたの?栄二さんの?」
 訊いたのは杏子だ。
「私からみて姪です。ワンピースの子が美可で、Tシャツの子が絵里。美可は今も豪徳寺に住んでいます」
 杏子は応えに相槌をうちながら、手帳にペンを走らせる。
「栄二は当時四三歳。生薬学の博士でした。兄の私が言うのもなんですが、できた奴でしたよ。あの時も研究論文が認められて、エルトリアに研究所をもらえたんです」

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