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Virus 27
2007/02/28(Wed)
 退院の手続きなど面倒なこと諸々は、宮崎が喜んで引き受けてくれるというので、全て押し付けて、中田と杏子は警視庁に三〇分とかからずに到着した。
 管理官室の前で杏子と別れ、中田は奥の部長の部屋へと急ぐ。部長直々の出頭命令というのだから只事ではないはずだ。やはり、今回の失敗の責任追及であろうか。
 部屋をノックしていざ入ると、新聞を広げていた部長が露骨な愛想笑いを浮かべた。
「この度はご苦労だったね。ま、なんだ。長い警察官人生、いろいろとあるよ。新しい部署でもがんばってくれたまえ」
 差し出された通知書を見て、中田は事情を悟った。
「転属ですか」
 心持ち、言葉尻が小さくなる。
「ん?なんだ、知らなかったのか?杏子君たってのご推薦なんだが。栄転だよ、栄転」
「は?」
 中田は自分がいまどんな間の抜けた顔をしているだろうかと思った。今回の不始末で降格処分をも覚悟していたのだが。
「いや、杏子君も前から国土のほうから再三誘いがあったのにずっと断っていたらしいんだがね。いい機会だから一緒に、と」
 いい機会とは、どこが『いい』なのかは中田にはわからない。おそらく本庁にとってのいい機会なのだろう。キャリアが不始末を起こすと、それがどんなにひどいものでも、まずもって自身は責任をとらない。ひとりのキャリアが責任を取れば、そのキャリアを登用した側の責任も追及せねばならなくなり、最高幹部の人事に影響がでてくるからだ。よって処分は、形の上では栄転ということにして一階級昇進させ、どこぞかの県警本部に転任させる。杏子の場合、以前から話があった国土とかいう部署にやっかいばらいされるわけだ。
 しかしそういった処分も、前述したとおりキャリアであるからであって、ノンキャリアである中田に適用されるわけがない。
「いい機会って……。拒否します」
 中田は言い放った。
 と、部長の眼に狼狽の影がかすめた。
「何を言い出すんだ?美女とふたり連れ立っての栄転だぞ。何が気に入らない?」
「自分に相応の処分をくだしてください」
 どこまでも実直な男だ。
 しかし、部長は陰惨な眼つきで中田を睨んだ。
「いいかね、中田警部補。杏子君がかばってくれていなかったら、ノンキャリアの君など交番勤務に戻されていたんだぞ」
やはり、と思った。杏子は行きたくない部署への転属の交換条件として、中田の降格取り消しと、なぜか自分と同部署への異動を上層部に提示したのだ。そんなことが通るのも管理官だからであろうか。中田は吐息をひとつ漏らした。
「それでいいんです」
「よくない」
 部長は右手の平で机を叩き、唾を飛ばす。
「いいかね?これはすでに決定事項だ。杏子くんが去って、それで事は丸く収まる。それで万事解決するんだ。君もわがまま言うな」
どこが、解決なのか。自分はわがままなのか。突っ込み所はいくつもあるが、聞いてもらえそうにない。結局、この男は杏子を警視庁から追い出したい。それだけなのか。
「あの……」
「あのもそのもあるか!国土に行け。もう一度言う。これは決定事項だ!」
 一方的に言い捨てると、部長は新聞を広げて、唯一中田からみえる左手を追い払うようにした。もう聞く耳もたん、ということだ。
 中田は通知書をスーツの内ポケットにしまい、新聞に向かって敬礼すると、部屋を後にした。

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