2017 10 ≪  11月 123456789101112131415161718192021222324252627282930  ≫ 2017 12
スポンサーサイト
--/--/--(--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事のURL | スポンサー広告 | ▲ top
Virus 22
2007/02/09(Fri)
「で、何の用だね。ルロイ君。任務は首尾よくこなせたのであろう?」
「ええ」
 返事はしたものの、ゴードンを見据えたままで、ハンスは頷くことはしなかった。
「ならば、後は我々の仕事だ」
 ゴードンは暗に帰れ、と言っているのだ。
 しかし、ハンスは周りに一度視線を流しただけで動こうとしない。
「確認をとっておきたかったので」
「確認?」
「ええ。やってしまった後で、誤解でしたってわけにはいきませんので」
「聞こう」
 ゴードンは自分のデスクに腰を下ろした。ハンスにもその正面のソファーを勧めたが、彼は立ったままでかまわない、と断った。
「向こうがスナイパーを雇った、という情報をリークしてくれたのは貴方でしたね?」
「うむ。信頼できる筋からの情報だったからな。事実であったろう?」
「しかし、狙われたのは替え玉ではなく、私でした」
「……」
ゴードンは、ただ黙って口唇の前で手を組んだ。
「何もおっしゃらないんですね」
 ハンスは一歩前につめよる。
「替え玉のことを知らない人間なら、私ではなく皇太子を狙うはずです。つまりスナイパーは知っていたんです。皇太子が偽者であると。これは機密の漏洩、もしくは……」
 ハンスは密かに腰のベルトに挟んだ拳銃の位置を確かめた。いつでも抜ける。
 一瞬の間……。
「漏洩ではないよ」
 ゴードンは一呼吸おいて静かに、だが断言した。
「それに誤解でもない。全て、私の指示だ」
「謀ったか!」
 言葉を吐くと同時に、ハンスの銃口がゴードンの額を捉える。
「謀った?違うな。あれは個人が所有してよいものではないのだよ。ハンス・ルロイ」
 こんな状況下でも、ゴードンの声にはいささかも脅えの色がない。いや、銃を向けられて劣勢であるはずの彼の方が、ハンスよりずっと優位にさえ感じられる。こうでなければ大使など務まらないということであろうか。
「プロト・タイプは今やわが国の至宝。それを殿下はわかっておられない」
「くっ」
 グリップを握る手に力がこもる。
「そんなことじゃない。貴方は私を殺そうとした。そんな男は同士ではない」
「決裂、だな。情報部の死神もずいぶん変わったものだ」
「何と言われてもプロト・タイプを渡すわけにはいかん。あれは貴方にとっても有用だということだ」
 ゴードンは突然笑い出した。
「甘い。甘いな、ルロイ君。私がベラベラと手の内をさらしたのはな、既に事が済んでいるからだとは思わんのか?」
――!
 瞬間、背筋を冷刃が滑り落ちた。ハンスは自らの毛が総毛だったのを自覚した。彼は一瞬で身を翻し、次の瞬間にはドアの向こうに消えていた。
「追いますか?」
 巨大な姿見を模した扉から、サングラスをかけた男が姿を現した。
「必要ない。外の連中に任せておけ」
 それから一度眼を瞑ると、ゴードンは前の言葉に付け加えた。
「連中に余り派手にするなと伝えておけ」
「は」
 サングラスの男は敬礼して、外に出て行った。
「時には真実よりも嘘のほうが良いこともある。私がしてやれるのはこれくらいだ」
――許せ。
 広い部屋にたった一人残った男は、そう愚痴た。
 数分後、窓の下の駐車場で爆音が轟いた。
「任務完了」
 机の上におかれたスピーカーからの雑音まじりの報告に、男はそっと眼を伏せた。

←人気blogランキングへの投票お願いしますm(__)mぺこ



この記事のURL | 連載小説 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top

トラックバック
トラックバックURL
→http://kobochan.blog83.fc2.com/tb.php/53-c0d184a8

| メイン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。