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Virus 19
2007/01/31(Wed)
 背後からかけられた声は、あまりにも唐突で、しかもその場の雰囲気にそぐわない軽快なものだった。
 驚いて後ろを振り返ると、歳の頃は一季より二つ三つ歳上であろうか。明るいブラウンの肩が露出したシャツに黒のタンクトップ、ワインレッドのスカートを穿いた女性が、何やらうれしそうに笑いかけていた。
 背が高く、脚も長い。ついでに褐色気味の髪も腰までありそうだ。鼻梁はつんと高く、両の瞳は活力にあふれている。スカートとおそろいの色のベレー帽もよく似合っていた。アメリカのプレイボーイ誌の表紙を飾るにふさわしい美人だ。が、一季には、そしてつぐみにも見覚えがなかった。
 呆気にとられるふたりにはおかまいなく、その女性は話しかけてくる。
「きれいな宝石なんだけど、どうも人気はイマイチなのよね。みんな流血のいわくを気味悪がって、すぐ離れてっちゃう。でも、古美術にはそういうの、つきものなのにね?」
 どうやら、同意を求めているらしいことはわかるのだが、少なくとも一季は古美術への造詣は全くもって浅く、ここからは早く離れたい一人なのだが……。初対面というのに、それを感じさせない彼女の馴れ馴れしさに半ば閉口しつつの返事は「はぁ、そうなんですか」という全く気のないものだった。
 しかし、彼女はそのことに気分を害することもなかったようで、さらに語り始めた。
「そうよ。例えばツタンカーメンの呪い、とか。王墓の発掘にあたったスタッフが、スポンサーのカーナボン卿をはじめ次々と原因不明の死を迎えた。有名な話でしょう?」
 その話は一季も知っていた。しかし発掘隊の死は、長いこと外気と隔離されていたために室内に充満した窒素ガスのよるものと、それにマスコミの捏造が加わったためできた話とも聞いていた。それを言ってみると、
「そうらしいけどね」と彼女はあっさりと肯定した。
「でも、神秘主義者とか、一部のオカルトマニアは呪術説を信じているわ」
 ベレー帽の女性は一季たちから視線をずらすと、ガラスケースに近づいた。中腰になり鼻先がケースに触れるほど接近すると、ロード・オブ・ドラグーンをじっと見据えるようにした。
「わたしはどっちでもいいけどね。きれいだなって、それだけで。――それに、偽物じゃね。呪いも何もないわね」
「偽物……?これが?」
 一季は偽者と断言したことに驚いて、彼女の横顔を見つめた。
 その女性は、屈んだ拍子に前に垂れた髪を手櫛で後ろへ梳くと、視線を感じたのか横目で一季を捉え、
「ええ。真っ赤な、ね」
 と、事も無げに言ってのけた。
「信じられない?でも、連れのお譲ちゃんは私と同意見みたいだけど?」
 ベレー帽の女性の眼の動きに習って、一季も視線を下におろす。
「あたし……知らない」
 女性の登場からずっと黙ったままだった少女は、無表情のまま、それだけを口にした。
「そ?」
 ベレー帽の女性は意味ありげに笑うと、一枚の名刺を差し出した。『週刊古美術・ライター、広瀬美可』とある。
「明後日発売の号に、この石の記事が載るから、興味あったら買って読んでね。できればお譲ちゃんも」
 そう言い捨てて、美可はスタスタとその場を離れていった。

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