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Virus 126
2009/04/14(Tue)
 シェリーからその連絡を受けたのは、昼食に何を食べようか、そんなことを悩んでいる時だった。
ディスプレイに映るシェリーは、さも不本意という感がありありだ。
『なんで、あんな素人を……』
「その素人を巻き込んだのは、あなたの国でしょう?」
 杏子は手に持ったMOにキスするふりをする。
――Test Program of Dragoon。そんなものが入っていたらしいMOだ。今は中身が空っぽの、エルトリアのエージェントがもたらしたMOは、今、CIAの局員を脅すネタとなっていた。
「あっちこっち覗き見していたツケね」
 エシュロンというものがある。そういう都市伝説がある。冷戦時、軍事目的で構築された通信傍受システムのことだ。
現代でもCIAには盗聴専門の部署があり、そこでは三六五日、二十四時間、世界中の通信回線――電話、ファックスから無線、メール、データ通信にいたるまで――を盗聴し、『テロ』や『爆弾』といった穏やかならざる単語を記録しているというのだ。
三ヶ月前の成田での爆弾テロを皮切りに、アメリカはエルトリアへの監視を強めた。それから間もなく内乱が勃発。世界の警察を自称する国としては見過ごせず、いつでも介入ができるよう準備を始めた。その矢先、エシュロンが拾って来たフレーズがTest Program of Dragoonと、Dウイルス感染から増殖プロセスの人工生命によるシミュレート。
エルトリア皇立研究所で行われたとされるシミュレーションは、CIA首脳陣の興味をひいた。彼らはその人工生命をコピーしようと日本のサーバーを経由して、研究所にハッキングをしかけたが、研究所のファイアーウォールを破った瞬間、目的のファイルをロストしてしまった。先日、国土管理室でMOの中身が消えてしまったように。そして、その先日に大規模停電が首都圏で起こった。
「つまり、トリガーだったんです」
MOの中身について、天崎はそう結論づけた。疑似Dが何の目的でつくられた人工生命なのかはわからない。しかし、一定のメモリ空間に置いて『他』を浸食して自己を増殖するプログラムであることはわかっている。そのメモリ空間を作っていた壁が、外部からの手で外されたため、増殖するための空間は無限大に等しくなったのだ。その広大な空間でTest Program of Dragoonという活性化プログラムが流れれば、疑似Dは文字通り『他』を浸食しはじめ、今回のようなサイバーテロのような様相を呈してしまったということだ。
杏子はインタポールのツテで、そこまではわかった。それをネタにして、CIAにエルトリアに飛んだ二人の保護を要請した。内々に事を鎮めたかったアメリカは取引に応じ、現地に別任務で赴いていたシェリーというエージェントが操作の援助という形でふたりに就くことになったわけだ。

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