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Virus 13
2007/01/07(Sun)
 ハンスはそれを横目で確認してから、外へと続くドアを開いた。当然そこにいるはずの一季とつぐみを呼び入れるためだ。しかし、そこにはふたりの姿はなく、かわりにドアに挟まっていたのであろうか、紙切れが一枚宙をヒラヒラと舞った。
 ハンスは慌てて摑みとる。
 その紙には『国立美術館に行ってきます』と書かれてあった。筆跡は間違いなく一季のものだ。
 舌打ちしつつ、ハンスは一季の携帯をよびだす。
応答はあっけないくらいすぐに返ってきた。ただ、ひどく慌てた様子で、加えて雑音がひどい。ハンスにはその雑音が電車のものであるとわかった。
はたして、予想通り電車に乗っているようで、「降りてから掛けなおします」と言って切られてしまった。
事態を把握しているハンスとしては、こんなときに……と思わずにはいられず、実に腹立たしいのだが、一季にはその事情を話していないのだから仕方がない。より正確に言えば、話せないでいた、なのだが。
と、ふと思い当たった彼は、ブラインドの隙間から外の様子を窺った。彼が帰ってきたときに隠れるようにしていた刑事が、その場にいないことを確認する。勤勉な日本の警察官が職務を遂行していると信じたい。
それから程なくして電話が掛かってきた。
「ハンス・ルロイ。安心しろ。おまえは自分のすべきことをはたせ」
 少女の声が少女とは思えない口調で一方的に言って電話は切られた。
しかし、ハンスにはそれで充分だった。
彼はスーツのポケットから車のキーを取り出すと、留守番兼連絡係をキャシーに任せ、
「行ってくる」
と、一瞥して静かにドアを閉めた。

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