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Virus 12
2007/01/03(Wed)
 白いセダンがそのビルの地下駐車場に潜り込んだのは、それから2時間ほどたってからだった。
「あ、一季クン。おかえんなさ~い」
 バイト先の塾の扉を開けると、小さな女の子が飛びついてきた。同時に「ていっ」と一季の腹に拳をみまう。たいして痛くはない。いつものふたりのコミュニケーションである。
「ただいま、つぐみちゃん」
 一季はそのつぐみの頭をクシャクシャと撫でる。
 そのすぐ後ろから黒服に金髪碧眼の青年が入ってきた。
「ああ、ハンス。おつかれさまです」
 流し台で洗い物をしていたキャシーも手を拭いて出迎えた。
「お茶にします?」
「いや、いい。すぐにまた出る」
 ハンスと呼ばれた青年は申し出を断って、それから一季を一瞥する。
ハンスの意をくみとって、一季はつぐみの肩を押して外へ出て行った。
それを確かめてからハンスは口を開いた。
「筋書きが変わっていた。狙撃されたのは私だったよ」
「狙撃犯は?」
 たいして驚いた風もなく、キャシーは言葉を返す。
「逃げられた。だが、だいたいの見当はついている。これから確かめにいくつもりだ。おまえたちのほうは?」
「警察庁が動いたようです。監察部管理官とその部下の警部補がここに来ました」
 杏子と中田のことだ。
 言って、キャシーはプリントアウトされていた紙を手渡す。
 それを受け取ったハンスは軽く目を通し、ブラインドの方を見た。
「外に一人いたな。あいつか。しかし、日本警察の力を借りねばならんとは、な」
 嘆息するハンスにキャシーが、先に断られたはずのコーヒーを飲むように促した。
「でも、これ以上頼りになる組織もないのではありません?」
「検挙率はいいけどな。ガードじゃない。それに検挙の方だって疑わしい。実際には年間八万もの行方不明者をだしている」
 そう言ってコーヒーを一口啜った。
 日本は平和な国と言われている。しかし、
一年で八万もの行方不明者が出ているというのは彼の言うとおりだ。夜逃げからホームレス、昨今TVを賑わしている隣国による拉致問題と様々ではあるが、中には事故や事件に巻き込まれた可能性のある『特異家出人』とされる人々がいる。これが二万人に達するまでになっているのだ。このうち半分が殺人にあったとして、一万弱という数字だ。それらは犯行であるのか、それすらわかっていないのだから、つまりは一年間でそれだけの完全犯罪が成立したと言ってよかろう。
「日中は大丈夫だろうが、じきにここも危なくなる。警察がアテになりそうもなければ、おまえとつぐみで一季を守れ」
ハンスは飲みかけのコーヒーをテーブルの上に置くと、小振りの拳銃を奥の部屋から持って来て、弾丸の装填をしはじめた。
「つぐみも、ですか?」
「そうだ。アレはそのためにいるのだろう?違ったか?」
装填を終え、確認を一通り済ますと、キャシーに持っておくよう促す。必要ないから、と拒否する彼女に、それでも護身用にと押し付けるようにする。
「アレは自分が何をすべきか知っている」
「わかりました」
 そう応えた彼女が、つぐみという少女を盾とすることを了承したのか、銃を手にすることに同意したのかはわからない。が、しかたなく、といった感じで頷き、銃を懐にしまった。

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