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Virus 94
2008/03/30(Sun)
 大久保が杏子に眼をやると、軽く頷いて、「昔の同僚です」
 と応えた。
 警察関係者とはいえ、杏子と中田の知り合いとはいえ、国土調査室からすると宮崎は単なる部外者でしかない。宮崎を入れる入れないについては、室長の大久保の判断となる。
 大久保の回答は、肯定だった。
「ありがとうございます」
と、宮崎は部屋に入ると、一同を見渡し、杏子に目をやり、お辞儀をしてから、中田に視線を移した。
 中田も、つられて、それでも困惑してお辞儀を返した。それが懐かしい。
 宮崎は同僚の頃から敬礼をしない警察官だった。公の場では規定通りに敬礼に敬礼で返すのだが、職場内ではまずもってお辞儀であった。
「ご無沙汰しています」
 じっと見つめられて、どう反応すればよいのかわからずに、中田は頬を掻きつつ、そう口に出した。
「本当に、何の沙汰もなかったですよね」
 そう言われても、空笑いで返すしかない。
 頼みの杏子と言えば知らんぷりどころか、ニヤニヤしている。
 助けは別の方向から入った。
 コホンと咳払いをし、
「感動の再会のところ悪いのだが」と前置きをしたのは大久保だった。
「君は制服でここにいる。と、言うことはプライベートじゃないね?」
 大久保の指摘どおり、宮崎は警視庁勤務の夏服である。見た限り帯銃はしていないようだが、職務中と視てわかる。
「先に用件を聞かせてもらおうか」
 大久保はソファを勧めて、自分はその対面に腰を下ろした。
 言われるままに宮崎はソファに座り、その周りを遠巻きに国土の面々が控える。
 その面々を手の平で散らしながら、杏子が宮崎の前に少々温めではある麦茶を置く。
「管理官自ら、恐縮です」
 宮崎はやはりお辞儀をして、グラスに口をつけた。
「あ、冷たい」
 ちょっとした感動のようだ。
「どうやったんです?」
宮崎は杏子の顔を視て微笑んだ。
「でしょう?こんだけ冷たくするのに苦労してんのに、ここの男どもときたら、感謝の言葉もなのよ」
 杏子の言葉に、その男どもは宙に眼を泳がせて、苦笑する。感謝はしていても、これ以上恩を着せられたくなかったから、と言えるわけがない。
 その苦笑を眺めやって、わざとらしく嘆息すると、
「あとで秘密を教えてあげる。それと、もう管理官じゃないからね。そういうの、気にしないで」
 と言って、杏子は片目を瞑ってみせると、一旦身を引いた。
 大久保が、何か言いたそうにチライラとハンカチ越しにこちらを視るからだ。
「では、聞こうか」
 大久保が全員の立つ位置を確認してから、ハンカチを下ろし、少し前傾して宮崎の眼を見た。

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