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Virus 78
2007/12/09(Sun)
 彼女はそれを押し込んでから、ドアノブをまわす。が、二回、三回と試したが扉は開かなかった。
「だめ?」
 少女にかわって宮崎も試したが、結果は同じだった。
「助け、待ったほうがよさそうね」
 宮崎は壁にもたれた。
「助け、ね。ケイタイで呼んでみたら?」
 少女は他人事のように言う。
なんでそんな物言いしかしないのだろう、と溜め息をつきつつ、宮崎はハンドバッグからケイタイを取り出した。
 映画館にいたので、電源を切っていた。昔はバイブにしておくだけだったが、非常の呼び出しがある職業に就いたからこそ。邪魔されたくないときは電源を切るようになった。これも大人になった、ということか。
 電源を入れてしばらくまつ。しかし一向に受信のアンテナは立たない。圏外――。
「あれ?」
 メールの手動受信をしたり、通話ボタンを押したり、電源を入れなおしたり――ひととおりのことは試したが、電波状況を示すアンテナは立たなかった。
「なんで……?」
動揺をみせる宮崎に、少女は自分のケイタイの待ち受けを突き出して見せる。
やはり、圏外だった。
「外との連絡は期待しないほうがいいと思うよ。みんながみんな同じことを考えて、メールや電話をしようとするから、繋がりにくくなってる。それだけが原因でもなさそうだけど」
 少女は言いながら、ポシェットからもうひとつケイタイのような物を取り出した。宮崎にはよくわからないが、なにかの携帯端末のようだ。
「え?」
「失敗したと思ってる?」
少女は端末を操作しつつ、横目で宮崎を見た。
「別に」
「エスカレーターに逃げた連中」
「シャッターが閉まる前ね」
宮崎も最初はそちらに向かっていた。とりあえず人に流れるほうに、だ。
「そう。そのシャッターはたぶん全階で閉まるだろうから、逃げた人たちは巨大な筒のなかにいるようなもの。そんななかでパニックが起きたら――あたしはゴメン」
「それは、そうね」
「非常階段も、その先に同じようにシャッターがある。外には出られないわ。一階、せめて二階ならガラス割って、そこから飛び出せる」
「強化ガラスとかワイヤーが入ってるんじゃない?」
最近は空き巣だけでなく、日中の押し入りも多く物騒だ。
「どうかな。景観も売りのひとつの海浜公園側のレストランで、少なくてもワイヤーは入ってないと思うけど?」
 彼女はそこまで言って、それから急に黙りこくった。画面の文字を追うその眼が、液晶のバックライトに照らされるなか、すぅっと細くなった。
少女は無言で立ち上がり、近くに壁にあった館内見取り図を端末の光で照らす。
 光の中心が現在地の赤丸表示に向けられ、それからホール周辺を照らし、それを何回か往復させると、彼女は端末をポシェットにしまい、今来た通路を戻りだした。
「今度は何?」
宮崎はまた追いかけることになる。
「戻るわ」
 少女は振り向きもせずに、言った。

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