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Virus 76
2007/11/25(Sun)
 その子は冷めた眼でスクリーンを見つめ、時々ホットコーヒーを口にしている。おしゃまもここまでやれれば堂に入っている。
それがやけにかわいく見えて、クスリと笑った時、それが起こった。
何の前触れも無く、映像が途切れ、浮かび合った文字列。
『Test Program of Dragoon Now Looding』
 緑に光る非常灯。
 異常を知らせるベル音。
 館内はざわめきに包まれた。
「原因を調べています。そのままでもうしばらくお待ちください」
 アナウンスが響く。
「なに……?」
 宮崎は、残っていたポップコーンをコーラで流し込んだ。
 と、暗順応した眼が、天井のファンが止まったのを捉えた。
――ちょっと、危険?
「申し訳ありませんが、安全のため一度外に出ていただきます。誘導いたしますので、落ち着いて行動してください」
 再度のアナウンスの後、館内の六ヶ所の非常灯が明滅すると、光がこぼれだした。職員がドアを開けたのだ。
 ただし光と言っても、懐中電灯の直線的な光で、それが客たちの不安な顔をかすめていく。それは、館の外も灯りが点いていないことを教える結果になった。
 こうなると落ち着いて、とはいかず、我先にと客は席を立って突進した。初めは歩いていた者も。自然と歩調が早足になる。
 子供の泣き声。罵倒――。
職員の「押さないでください」に耳を貸す者は少数だ。これが光源が多く、窓も多い階下のデパートだったら違ったかもしれない。だが、ここは広くても密閉感のある映画館で、まだ天井のライトは点いていない。
 非常灯の緑と職員の持つ懐中電灯の頼りない光の中、客たちは止まってしまったエスカレーターになだれ込んでいく。そのなかで、拡声器を構えたスーツの男が大声を出していたが、群衆のざわめきのなかでは聞き取れなかった。
 おそらくエスカレーターが使えない、とかそういう類いだろう。宮崎の見ている前で、エスカレーターの防火シャッターが客たちを分断するように降りていった。
 シャッターが閉め切った重い音を残すと、反対側から女性の高い声が割れて聞こえてきた。見ると、客たちの頭の中から細い手が左右に触れれているのがわかる。
「こちらです。こちらの非常階段からおねがいします」
 宮崎は転身して、そちらの女性のほうに向かおうとしたが、そのとき、壁にもたれている女の子と眼が合った。
 隣に座っていた、冷めた眼の女の子だ。
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