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Virus 38
2007/04/26(Thu)
正午になると金管バンドの練習が終わるので、美可もプールから上がって、昼ご飯を用意している母親のもとに連れ立って帰る。その道すがら、
「あそこ、さ。間違ってたでしょ?」
などと指摘してみる。すると、
「わたしは主旋律じゃないから、あれで楽譜通りなの。間違ったんじゃないよ」
 その言葉の真偽は楽譜自体見てないし、見ても譜面を読めない美可にはわからないのだが、彼女が指摘した通りの演奏をしたのが自分だと白状してしまったことに気づくこともなく、ムキになって否定するあたりが、同じ顔ながらかわいいと思ってしまう。
 そう、絵里はかわいかった。男の子の人気も絵里に集中していた。何度クラスの男子共に仲介を頼まれたことか。二十回を超えた辺りで馬鹿らしくなって数えるのをやめた。しかし、その誰とも付き合ったことがない。
「美可、あのね……」
 絵里がふと立ち止まった。
「ん?」
 二、三歩先に進んでいた美可も立ち止まり、絵里を振り返る。しかし、絵里は目線を地面に落としたまま、その先の言葉を発さない。絵里が何か迷っているときのクセだ。
「どうしたの?」
 しゃがみこんで、絵里の顔を覗くようにした。
 絵里の瞳が落ち着きなく、美可の顔と地面を行ったりきたりする。
 溜息をひとつ、立ち上がった美可は絵里の両の肩を抱きしめるようにした。
「ほら、言ってごらんよ。あたしは絵里を全部受け止めたげる」
 耳元で囁くようにする。その囁きは美可のアイデンティティーそのものであった。かわいい自分の半身は自分が守る。この娘の言うことは何でも叶えてあげる、と。ついでに、絵里が無理難題をふっかけることはありえないことも知っていた。
 しかし、この時の絵里のお願いは、美可の常識を超えていた。いや、美可自身は考えたことがないでもない。それどころか、一度はやってみたいと思っていたくらいであった。ただ、そういうことが許されるのは、漫画とか、やはりそういった空想の世界でのみと思っていた。それを今、この双子の妹は現実に行おうと言うのだ。
 断る理由はない。美可は二つ返事で了承した。

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