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Virus 80
2007/12/23(Sun)
「人工生命?」
「ロボットか何か?」
 尋ねるふたりに天崎は振り返り、顔の前で掌を振った。
「人口生命というのは、プログラムの一種です。コンピュータのなかにつくられた仮想生命体で、最初に定められた規則により学習、行動し、増殖していくものです。これで生命の進化や社会形態の変容を観察します」
 天崎は、側にあったコピー用紙に、四角いブロックを繋げた絵を描いてみせた。
「ポリゴンで描かれた魚みたいでしょ?カールシムズってCGアーティストがつくったものです」
 天崎は最初の絵から矢印を引っ張って、その先に、同じ形のブロックを使って四肢を持ったものや、直線に繋げたものを描いた。
「この人工生命はたかが四角い箱に抽象化された生命のモデルですが、『巧く泳ぐ形になりなさい』という命令に基づいて自分で学習してこのように派生していったんです」
 次に彼は縦と横に軸をとり、実線と点線の波形を少し横にずらして描いた。ロトカ・ボルテラ型振動曲線と呼ばれるものだ。
「実線が草食動物。点線が肉食動物。実線の個体数が増えれば点線も時間差で増え、実線が減れば点線も後に減っていきます」
「生態系の補食者-被食者系ね。小学校だか中学校でやったわね」
杏子の言葉に天崎も頷く。
「まさに、その連鎖のグラフ化もシミュレートで計算されたものなんです。こういった、コンピュータ内での疑似生命を使ったシミュレーション実験をA-Life=人工生命と言うわけです。この実行ファイルは――」
 天崎がエクスプローラ内の『D』と名付けられたファイルを、マウスポイントで囲むようにする。
「その人工生命シミュレーションのプログラムだったわけです。昨日はMOが自動実行してしまってプログラムが起動しました」
「それであの結果……」
 中田の言葉に、天崎は苦笑した。
「わかりません。しかし、停電を起こすプログラムなんて聞いた事がない」
「ウイルスって書いてあるわよね?」
 杏子が液晶画面の文字を指先でなぞる。
――Dウイルス。
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